門限9時の領収書


なんやかんや、そんな訳で大人力の高い雅は、洋平にとって最高の友人だ。

(……と、熱い友情ごっこが似合うくらいにここは心友と表記するのが妥当なのだろうが、

彼はピュアではないので美しい単語は用いない)


同い年の癖にモジモジする自分は、なんだか弟みたいだ。

「……手、繋ぐタイミングが謎。もう三ヶ月になるしさー」


  ……俺だって

 きっついんだけどね

馬鹿だと言われて構わない。

遡ること数十日前。GWのデートは訳ありだった。

百貨店の催しコーナーでたまに開かれる子供騙し的簡易なお化け屋敷に行った。

暗闇プラスはぐれやすいプラス恐怖心という三点が揃えば、

計算しなくとも、咄嗟に手を繋げるし違和感もないし、とベタなことを考えた。


しかし、

怖がりな洋平と同じくらいビビりな彼女はひたすら叫びまくるだけで、

(叫ぶ自分たちに爆笑さえしながら)、

カップルのセオリーをちっともなぞれやしなかった。

……単純に楽しいデートなだけだった。

いつも百点満点(ハナマル)健全デート。

例えばボーリング。
ハイタッチを目的にしたはずが、ストライクは一回きりで、まず手を合わせる場面がなかった。


面白かったのだから、デートプランにも彼女本人にも、何の不満もない。


けれど――……

仕方がないじゃないか。
若さが武器の年頃どストライクなのだから。

何がと言わなくとも、ここまでくれば皆知っているはずなので、

奥ゆかしく濁しておこう。