「なんかさー、……今の調子のまんまなのかなーとか。つらい、タイミングない。はは。

そりゃ、言ってまあ公園で話してたりならさ、まあまあ良い感じになるんだけどさー。

けど甘いモードになりかけたら向こう照れ臭いらしく、甘〜い状況に笑うから、さ」


そう、洋平の彼女は見た目がとても女の子らしいのだけれど、

中身はあんまり女オンナしていない。……女を出さない。

普通、触って欲しそうな目をしたり、性別をアピールしたりするもんだろうに。

こちらとしても大人なあの子を見てみたいのに――――全くそのような予兆がなく。


  ……。

  紳士、ね。

「はぁ」と、わざとらしいため息をつく洋平の話を聞いていないはずなのだが、

『その笑顔が好きなんだろ』と、悪戯に笑う雅はズバリ言い当てた。

突然胸の中が暴れ出す、血が巡る感覚が分かって気持ちが悪い。

なんだか芸能人を初めて見かけた時の興奮状態に似ている。


目尻を垂らした とびきり甘い笑い方の同性でも十分にドキリとする中性的な顔立ちの少年がぼやけ、

なぜだか彼の姉の顔が重なった。

あの綺麗な人は“幸せ”なのだろうか。

――結婚。

自分の彼女を幸せにできる自信はないけれど、笑わせてあげることについては誰にも負けない。

――綺麗な人はどんな顔で好きな人と誓いのキスをしたのだろう。


  、……

やっと分かった。あの綺麗な人をかなり廉価にすれば――雅の顔に自分の彼女の顔がゆっくりと重なった。

なんとなく似ているような気がした。


少し見つめれば桃色のホッペをして俯き加減に微笑む大好きな結衣に――