宿題を手に席を立つ雅に纏わり付く洋平は、

なんだか掃除機をかける母親の後ろを追い掛ける子供のようだ。

……同い年にも関わらず後ろ姿さえ立派に見えるのは何故。


彼は実家がお金持ちだと噂で聞いたし、限りなく真実に近いにも関わらず、

電車ではなく自転車で約一時間かけて通学するあたり庶民的で良いなと思う。

「聞いてよーママ」とふざけてみせれば、『変態臭いからアタシ嫌だ』と同じノリで返してくれる辺りも、

同じ感覚を持った一般市民っぽくて好きだ。


角が欠けた消しゴム、一本で二色の蛍光ペン、シャープペンシルが必要最低限だとしたら、

服コの筆箱の中身に色鉛筆は必須である。


「ねーママ」

聞く気がないと言う雅に恋愛相談をすることが、実は定番となっている。

というのも口が堅い人は信用出来るし、

うだうだ話をしてもアドバイスはされないので、こちらは気が楽だし、

(助言が欲しいのではなく話を聞いてもらいたいだけだから。

それから適確に斬られたら立ち直れないから)、

何より、ただただ聞いてくれるだけなので、下手に持論を押し付けられない為、

彼に相談すると、自分の気持ちが“自分で整理できる”ような気がするのだ。

だから一方的に彼を慕いまくっている洋平。

なんだかんだで雅には付き合う前からお世話になりっぱなしだ。


今だって……