「田上さんってさ……」
返事を待つように勿体振って区切り、雅がシャープペンシルを止めるのを待ってから、
どんぐり目と合った瞬間、待ってましたとばかりに洋平は告げた。
「なんか。色気なくない?」
単刀直入なまでに。ぽつりと吐き出した言葉は机の上に落ちる。
『うんー? お前なかなか失礼な事実を』
不信感をあらわに眉を寄せる同級生に誤解されないように慌てて訂正をし、絶賛恋愛中の男はこう続けた。
「なんかだって、俺ら。ほら、付き合って三ヶ月ちょっと……
放課後デート八回、休日デート五回、お弁当は週一で、? そんで登下校は――」
『え、待ってよ、何。お前数えてんの、なかなかきもいな』
(宿題はどうでもよくなったらしく)、雅は露骨に下顎を突き出してみせる。
……キモい?
健気な恋心を侮辱された上に腹立たしい顔面を披露され、舌打ちをしたい気分で、
――しかし畏まった態度だと言いづらいので丁度良かった。
「うっせ。違うんだって。聞け、話は最後まで聞け。
チューなんか夢の夢、手も繋いでない。つーか、何にも触ってないんですけど。ハイタッチも握手も」
この三ヶ月を振り返ると、情けなくなるばかりだ。
そして三ヶ月後を想像しても、――やはり情けなくなるはかりである。
なぜなら……



