きっと本当の大人になった時、夏の野球甲子園を見て言いようのない焦燥にかられるように、

教室を生きる今、――あの時ちゃんと心を開けば良かったと後悔するのだろうけれど、

洋平は洋平だから仕方がない。


弱虫だから虚勢を張るし、知性がないから理性的な言動を好み、

足りない部分を補うことが好きなだけ。


逆順して見れば、単純明快で……――――なんてごちゃごちゃほざこうが、ここは占いの館ではないのだから、

うだうだ洋平の人生論について語られようが、誰も興味がないのである。


踊り場に居る彼女の存在を一時停止して、散々長ったらしく弁解しようが、結局答えは一つ。

洋平は自分の安価で痛い思考が面白いから、洋平であるだけ。

笑えるから洋平であるだけ。

だから洋平は洋平らしく生きるだけ。


そんなまとまりきれていない結論から彼を分析すれば、

結衣と築き上げる足踏み状態の恋愛を送る真意が分かるはずだ。

仲間周りの皆がせかせか事を進めたがるなら、

あまのじゃくな自分はグダグダ過ごしたいじゃないか。


社会は結果を急ぐのか効率的に作業を短縮して、簡素化する傾向にあるなら、

たかがキスにいちゃもんつけて、皆が勿体ないと焦る時間をゆっくり贅沢に使いたくなるじゃないか。


くどくなるが、理由は至ってシンプル。

真っ直ぐで平らな道なのに、くだらないことに反応して寄り道ばかりする結衣と、

グリコをしながらノロノロ進む方が楽しいからだ。面白いからだ。

キュートに飾るなら、洋平が結衣を好きだからだ。



「クラスん男子にさ? ダーリンじゃなくってプリンスって呼んでるって言っとくから」

先程彼氏にキスをされた手の甲を摩り、自慢のお姫様である結衣が笑った。

こうやって目の前で笑顔を見せてくれるなら――、いいや隣で笑顔を、いや傍で笑顔を、ああ、まとまらない。

とりあえず洋平を想って雑に爆笑しくれるなら幸せ。