門限9時の領収書


あまりに夢がない話が続き申し訳ないのだけれど、

洋平の周りには確かに居る……恋愛、彼女、付き合う、両思い、

キラキラした単語の割に、彼女とは体を満たす相手という見方をする者が。

女遊びをする人は居る。
放課後に男子グループで集まれば、わざわざ自慢する人は居るっちゃあ居る。


そして、(聞いてもいないのに)女に不自由しないと披露する人は、なんとなく仲間内で身分が上になる。

噂が噂を呼んで、学校という括りで(なぜだか)凄い人なんだと注目される存在になる。


そう、女子高生は異性にカワイイと言われる子が学年で人気者になり、同性から憧れるように、

男子高生も異性からカッコイイと言われ――カワイイ子と関係を持った奴が学年で有名になり、同性から羨望される局面がある。

それは事実と言えると洋平は思っている。




だから、近藤洋平。

ファーストキスは七夕まで我慢するし、もっと上級者なことは結衣に合わせて辛抱するだけだ。

理由は単純。なぜなら、彼は彼だからである。


ちやほやされ慣れた同級生は――……
付き合ってからの段階がスピーディーだし、デートはやたらやりたがるし、

不特定多数も居るし、時々流れで避妊をしないとか言うし、――つまり、とってもとっても大人。


女子には大人が人気らしい。


洋平は右を向けと言われたら左を向きたいし――――なんて少し背伸び感があるので、

彼の人格に合わせていつも通り雑に説明するなら、

服を選んでいて店員さんに『売れてますよ』と言われたら、違うのが欲しくなるし、

『好き』と言って素敵な胸キュンワードを並べる告白に女子が感動するなら、凄くつまらない伝え方をしたくなるし、

――極端な話、皆が狙う田上結衣なら、あえて彼は手を出したくないタイプ。


わざわざ理由を言う必要はないだろうが、奇をてらう方が簡単に目立てるからだ。

中身空っぽな洋平の肩書は、悪ぶることがイケてるとされる男子高生なので、

逆に自分は真面目ぶってみたいだけ。


周りと反対のことをするのが面白いから。

皆が大人モードで居るなら、あえて子供モードを貫きたいだけ。

つまり、痛いだけ。