門限9時の領収書


さて、男子高校生となれば、教室で見ると恐らく七割の生徒たち――

例えば髪を染めたがるし眉を弄りたがるし、ネクタイを緩めたがるし襟足を伸ばしたがっていたりする。


つまり、学校という世界、高校生というキャラクター設定の場合、

世間では宜しくないとされることを身軽にこなすことで、

女子からイケメンだとかカッコイイだとか褒められる節がないとは言えない。

そう、禁止されている縛りから抜け出す奴が、皆からフューチャーされる現象があると言ってもあながち間違いにはならない。


要するに、ちょっとタブーを破る演出は、オシャレな役に入る実力派である彼らにとってマストだったりするんだとか。



そんな訳で、教室から絶大な人気を博す者はモテて当然。

またそのテーマかとガッカリしたり憤りを感じる方も居るだろうが、

モテるが指すのは、告白回数やアドレスを聞かれる回数ではない傾向にあるようだ。

案の定、経験人数がステータスだったり、年齢が早い方が武勇伝だったりのせいか、

一夜限りのエピソードの引き出しが多い方が、学年で一目置かれたりするんだとか。


(くだらないことは洋平も重々承知だが、教室にある暗黙の了解なので、ここは『童心』の一言で流すことをお勧めしたい。

彼らの大半は三十代になる前に気づくだろうし、また、いつまでも変わらない思考ならアレ?と疑問に思うようになるだろうし――

そのままの人が居ることはこの際省こう)


そんな現状、なんやかんやで、つまり洋平はさっさかキスをしておくのが普通。

女子たちに、ちょっと噂されるくらいのクラスメートは皆そうだからだ。


さすがに初彼女やあまりちやほやされてこなかった者は、当て嵌まらないのだけれど、

洋平くらいなら、付き合って三ヶ月――普通はキスを済ませ、次のステップもとっくに終了しているとされるマドカ高校なんだとか。