門限9時の領収書



 ……。

本当は彼、この期に及んで、手の甲ではなく口づけをしようかと企んだのだとか。

好きなのだから普通のことで、何も責められることはないはずだ。



――なんだか、初っ端からキスキスキスと、あまりにくどすぎる。

なぜなら、たかがキスでどんだけ引っ張るんだと皆 首を傾げているはずだからだ。


いいや、最大の山場でCMに行くくらいもどかしいどころか、若干イラっとしているに違いない。
立派な減点ポイント。


主人公支持派からすれば、なかなか唇を渡さないことからヒロインの好感度は高くないことだろう。


そもそも、いくら結衣にとって洋平が初彼氏だろうと、さすがに高校二年生。

彼女はちょいちょいナルシストであり、ぼちぼち歪んでおり、まあまあ擦れている為、

『きすってなぁに?』の、ピュアな天然ちゃんではないのだ。

そうなると、うぶという単語の意味は辞書とちょっと違うはずだ。


だから、幸せいっぱい仲良しカップルの象徴として、キスをすることは自然なこと。



けれど、もう誰しも気付いていることだろう。

――洋平は少数派こそカッコイイと思う痛い人物なのだ。


キスごときでああだこうだ煩い彼に何も魅力を感じない方が居るなら、

プライバシーゼロで、こんなにも私生活の切り売りをしておいてあまりにも気の毒な為、

せっかくなので、この際どこの学校にも一人は居そうなタイプの洋平という生き物を掘り下げてみよう。

彼らしい恋愛は、脆さと隣り合わせ。