常に笑顔、常に冗談、なぜなら楽しいから。
たとえ偽りだとしても、相手を喜ばせたいと願うから。
彼氏が、彼女が、(浅はかながらに)人間関係を考える上で働くパワーが似ているせいで、
いかなる時も分かってしまっているから、ただただ空回りしていようが良いのだ。
結衣の様子が変なことを感づいている洋平、
洋平が無理をしていることを気付いている結衣、
二人がそれぞれ隠している。
その証拠に今、マドカ高校きっての愚図なカップルは、ぎこちなく本心を潜め笑っているのだ。
――そう、思考の基盤が被る同士だからこそ、少年少女は言葉にされない含みに気づいているのだ。
それさえ口にしないのだけれど。
聞こえは悪いが、二人ともカジュアルにナルシストだから。
奥ゆかしさが粋だと知ってしまっているから。
綺麗にまとめるなら、以心伝心できる関係が憧れだから――だ。
「ね! そんなことよりDVD、愛美に借りた。見よ、スカイフィッシュ。見る?」
洋平が大好きな上目遣いの笑顔を見せて、結衣は次の提案をする。
まつ毛が長いので、瞬きをする度に風の音が聞こえそうだ。
……。
アツさがない付き合いが理想だった。
『アタシと元カノどっちが好き?』なんて、一途な乙女らしい振る舞いをしない感じが好きで。
綺麗な涙を見せない彼女が好きで。
洋平だって問いたいのだ。雅を一瞬でも好きになったことはないのかと。
付き合う前、実は疑った時期があった。
二人が仲良く話す姿に。
手作りケーキを渡す姿に。
…………。
しかし、そういう恋人トラブルめいたところを削除する付き合い方が夢で。
なのに今、洋平は結衣を抱きしめたくて堪らない。
結婚したいくらい好きだとか、愛しているとか、清潔にロマンチックな想いを伝えたくて堪らない。
例えば愛していると叫んだり、好きだと抱きしめたり、ドラマチックに恋愛をしてみたくなる。
甘い甘い言葉を彼女にプレゼントしてみたくなる。



