「お前オジさんじゃん、おじさんって微妙、あはは。

えーでも俺らが去年結婚した感じだよなーすげー、謎ー。

てか女装したらお姉ちゃんそっくり、ふ、似てるよなー……不気味」


曖昧に頷く雅――彼は姉にそっくりで、双子なのではと勘違いするくらいだ。

そう、ひどく美しい顔をしている男子生徒は頭も良く、スポーツも出来てデザインコンペで入賞するし、

ベタに背が高く、話も上手で――正に王子様。

彼の親友である洋平は必然的に隣に並ぶ場面が多く、

ただの引き立て役となる高校生活を送ることとなり、

――だからだ。

中学に比べ、彼のお陰で洋平はめっきりモテなくなっていた。

話しかけられるとしたら、王子様のメールアドレスを教えてくれとか、仲人をしてくれとか、それ関連。


 ……。

  結婚か……

まだ十六歳、結婚するには後二歳足りない。

世間的に見ても美少女な友人の姉よりも、自分の彼女が一番可愛く見えるなんて、

本当に末期かもしれない。


妄想に耽る世界は お花畑で蝶々さんがちよちよ飛んでおり、小川のせせらぎ音も聞こえてくる。

ピンク色が似合う お花畑の国の住人は洋平と結衣だけ……

王子様のように優しく手の甲に唇を落としてしまいたい。


 、……

 キスしたいな

斜め上をぼんやり見つめている少年に ため息を一つ、

答えだけではなく(写したとバレバレで減点されるから)、

プリントの余白にカモフラージュとしてぬかりなく問題を解いた痕跡を残しながら雅は言った。


『洋平、結衣ちゃんと結婚したいんだ、夢見がち』