年齢を基準で考えるなら古臭いと分かっているけれど、

頭で考えてしまいがちな洋平だ。

父親に感謝を示したいから――――なんて、彼の場合はお利口発言が非常にきな臭いので控えよう。


訂正しよう。恐らく根本が誠実ではないからこそ、自分は故意に律儀な青年を演じたがるのだろう。

そう、もっともらしく語るなら、毎日が密着ドラマの主人公だと設定している為、

わざと大人ぶって振る舞うことは苦にならないのだけれど。


『結ー衣?、まだー?』

上の階から待ちを催促した女子高生らしい声がし、「今行くー」と返せば、そろそろ立ち話も終わる合図。


「お母さん緊張すると思う、あはは。またメールする、楽しみ」

「うん、俺も保護者ウケの良い好青年目指すわ、はは」

天使だからか上へ消えていく結衣を見守ってから、

(男子が好きなおっちょこちょいサンは何もないところで滑り落ちるらしいから心配で。)、

きちんと歩けているのを確認し終えた洋平も靴箱へと向かおうとしたら、

『ぽこりん?』と、彼女の友人の声がした。


仲良し組から自分はどんな評価をくだされるのか盗み聞したいところだが、

なんだかタチが悪いので慎もう。


 ……。

洋平が歩く道、曲がりくねっていやしないし真っ直ぐなのだけれど、地味にデコボコだ。

見えないトラップだらけで、勝手に躓く。


廊下を進めば確実に出口が見つかる学校で迷子になるのは誰?

後ろは振り返らない、なんてカッコイイことは言えない。

なぜなら過去に落とし物がないか不安だから。

それでも自分の忘れ物なんかどうでもいい――とりあえず結衣が向かう道には先回りして、障害物があるなら自分が取り除きたい。

どうせうっかり者だから見落としているのだろうが、

どうせなら可愛いあの子が怪我をしないように努めたい。

それが正しいのかは分からない、ただ好きな人の笑顔が好きなだけ。


空から降ってくる薄い雨粒は足跡を消していく。

心の軌跡は刻まれているから大丈夫。

小学生の頃、雨の色は何色に塗った?
歳を重ねると絵の具を選べないから、筆は汚れない。

さて、夕方の空は誰のもの?


…‥