……。
祖父母は洋平を嫌うから、いつまでも自分を認めてくれない。
だから、せめて彼らが可愛がる弟を兄らしくしっかり見てやりたい。
良平に感謝しているのは洋平の方、……小さな天使が居なければ初孫と祖父母の間には会話すらなかったので、今は天国だ。
失望はしない。
祖父母にとって洋平の父親は子供だから、孫を受け入れないことが親なりの子供に対する愛情なのだと思う。
決断を忘れないようにと。
後悔しないようにと。
母親側の両親に良平さえ会ったことがない。
……。
見えない愛なら見えるから大丈夫。
リフォームをする際、洋平の部屋に作業スペースを設けることを提案していたのが祖父母だと知っているから。
いつだって見えない。
見えないから尊い。
たまに見えたら嬉しい。
これはまた、とってもシリアスではないか。
真剣さはキャラではないから、高校生らしく言うなら女子の谷間が見れたらラッキーみたいな感じ。
そう、ガサツで。今までのはナシだ、あまりに洋平らしくないから。
『キスした?って送ろうか?』と、でたらめなメール文を音読する雅が笑った。
彼は普段、連絡が入る以外は滅多に携帯電話を使用しない癖に、
どうして結衣に限って、今は用がないのにメールを打とうとするのか。
時々、いらない心配をしてしまうのが洋平だ。
(初期設定のままの)淡泊な受信メロディーが鳴ることから、
彼女は彼氏の親友とお喋りを始めたらしかった。
ヤキモチとかライバル心とかの関連は封印したい。
ゆっくりとしたボタン音に、「打つの遅いな?」と話しかけて、洋平は枕に顔を埋めた。
嫉妬したくなかった、爽やかな人になりたかった。
教室で見ると普通は恋人と言えば、
苦楽を分かち合い支え合い認め合い補い合い尊重しあう関係らしいのだけれど、
なぜか自分たち二人は真面目な雰囲気になったためしがないし、
そもそも本気モードが似合わなかった。
毎日が楽しくて爆笑さえしていれば洋平は良かったし、結衣だって満足していたし、
二人の明日は幸せにしか繋がらなかった。
障害を乗り越えることがない恋愛は、中身レベルが低いのだろうか。



