そして、結衣と結婚することも夢だけれど、自分にはまだ早くて、
雅という最大のライバルから結衣を奪うには――それでも愛蔵したいからと、計算して妊娠させることはできない洋平だ。
闇色と境目が分からず、シーツを広げても終わりが見えない。
親友の深層心理はよく分からないが、読めないことが素なのだろう。
彼は自分の彼女である結衣に気がないのだとハッキリ分かった。
でなければ、こんなことを飾らず口にするのは不可能だから――……
『俺が洋平なら田上さんとする。待たない。待ってる内に逃げられるから逃げないように妊娠させるけどね? あはは』
覚えてきた台本を読むように流暢に喋ることから、彼が咄嗟に考えた台詞ではないことが明らかだった。
つまり、雅という人は王子様らしからぬ持論を信仰しているという皮肉。
舌の表面が渇いて上あごに密着する感覚が不快で、唾を飲んでも戻らないものだから困ってしまう。
「あはは……なに、揶揄?、ジョーク?、あんま笑えないんだけど。はは、……大事にしたいんだよ、俺は」
大事にする、定義は知らない。
本当はなにもかもよく分かっていない。
好きなだけなのに、頭でっかちになり迷走してしまう。
ただ不安で、声に出して確認したくなる。
『ふ、冗談だよ、あはは。それよりさ、なんて言うの、あれだよ洋平、だから洋平はさ、どんなだって優しいパパになると思うけどね?』
王子様が柔らかく笑ってくれたような気がしたから、
単純な洋平は、自分にも多少なりとも父親気質があるのかと少し心配事が和らいだ。
とりあえず、一生懸命に今を生きたい。そう決めた。
どんな未来になろうが幸せを見つけられる人になりたい。
――以上、洋平による意味不明な考え事は一件落着。
そう、早い話、この長ったらしい演説は、
雅に自信をつけて貰うことを前提とした洋平による“構ってちゃん独り言”というギャグにしておいて。
本音なんかじゃない軽い雑談という風にしておかないと、洋平が恥ずかしいから。



