――授業に上の空な洋平は、縮小された平面の自分の容姿の観察を始めた。

赤茶だった髪は二年になる前の春休みに黒く染めた。

(「あえての黒髪がカッコイイ」と、彼女の結衣が友人の山瀬たちと話しているのを小耳に挟んだから)

好きな女の子に合わせて外見を変える男を、今まで気持ち悪いと引いていた。

しかし、どうやら自分は ばりばり気味が悪いタイプなようで、黒髪続行中である。


それはさておき、体型はというと、彼女は頻繁にヒール靴を履くので私服だと特別差は生まれない。

キスをする時は自分が背中を少し曲げるのが理想だったりする。

 ……。

ファーストキスのシチュエーションを考えるだけでニヤつく洋平は本当に不気味だけれど、

『十代だもんね。』の一言で、スルーするよう重ね重ね願いたい。


がちがち筋肉質とは違い、細身だと言われる――悪く言えばひょろ長いってやつ。

目は中心に寄っており、くっきりとした二重のせいで余計目力が強いように思う。

唇は薄いらしいのだが、いちいち自分の細かいパーツまで観察しないので、よく分からない。


とりあえず洋平は八重歯が嫌なのだが、
尖った自分の歯を可愛いと好む結衣は謎でしかない。

また耳は猿みたいに立っているのが嫌なので髪の毛で隠しているけれど、

やはり彼女がやたら自分の耳を気に入るのが謎だ。

――もしかするとコンプレックスを気に入ってくれる為に恋人は存在するのだろうか。

それが神様が男女に性別をわけた理由なのかもしれない。

(なんて神様は体育祭と受験の時くらいしか信じない癖に、いちいち引き合いに出してみるのが高校生イズム)


中学の時は、クラスで一番カッコイイとよく言われたけれど――……