洋平にはまだ分からない。
赤ちゃんを産んだら正解?
頭のどこかで否定したがる自分は……同じ思いを子供にさせたくないからなのだろうか。
父親も母親も好きだ。
なのに洋平は両親の説明をする時に、決まってアラフォーだと口にする。
逆算されたくないからだ。
歳を明言すると、高校卒業の辺りで妊娠何ヶ月だったかと判明してしまう。
……小学生高学年の頃にデキ婚とあだ名を付けられていたことを、
本当は気付いていたが、洋平は知らないフリをして笑って受け流してきた。
お調子者であれば陰口を叩かれない、それが今の性格を作ったルーツなのかもしれない。
自分をからかわれるのは構わないけれど、両親をけなされるのは嫌だった。
だから――洋平は洋平らしいユニークな人柄となったのかもしれない。
祖父母は堕胎することを望んでいたらしいが、それは必ずしも残酷なのではなく、
きっと色々お腹の中の命について真剣に悩んでくれたからで、形が違う愛だったはずだ。
……産まれたことに後ろめたさを感じることは、きっと皆への裏切りになる。
それに産んでくれたから、結衣に出会えた。(すぐ恋愛に絡めたがる浅さは、最近の洋平の癖)
家族を怨まないし、むしろ好きだけれど、
自分が父親で結衣が母親だったなら、洋平という子供は親を憎んでいるかもしれない可能性がなくもない。
……。
小学生の頃、学力系が苦手でテストはいつもクラスで下の方だったら、
無邪気な友人に『デキ婚だから仕方ない』と、悪気なく言われた。
見返してやりたくて中学生の頃、五教科を頑張って学年上位になったら、
下位の生徒たちに『デキ婚なのになんで?』と、言われた。
結局、洋平が何をしようが言葉は変わらなかったし、
そのお陰で人の目を気にすることが馬鹿馬鹿しくなり、踏ん切りがついた。
良平が居るなら、まあいっか、と。
可愛い弟が存在するのは、少なくとも兄を産んだからで、だったらまあまあ意味はあったはずだと。
そうやって解決できたのは、両親の愛情がそれなりに正しかったからな訳で、
今の洋平自身は精神がお子ちゃまだから、二人のように良い親になると断言する勇気はない。



