とにかく彼にとってはキスをしたい唯一の存在。

いいや、そんなキラキラした美化はよそう。
白状するなら夢の中ではとっくに服を脱がそうとした。

(本物を見た時に理性が効かなくなりそうなので、ボタンに手をかけて止めた――

空想でさえ未遂だったりする残念さは、彼のメンタルが気の毒なので秘密。

ここは“いい人”とキャラクター設定してあげておいていただきたい)

彼氏なのだから、変なことを考えてごめんなさいと謝るつもりはないけれど。


幼い頃の明るい茶髪に染めたがる時代を過ぎた程よい焦げ茶色をして、

巻き髪やストレートヘアや数年前にブームだった重ための毛量とも違う自然に毛先がふんわりした軽めの髪型は新鮮、

また素材を生かす薄いお化粧が親しみやすく、可愛らしいと思う。

私服は自分に合ったものが分かっているセンスをしている為、街中で通用するレベルのオシャレな感じ。

クラシック? ピアノみたいな感じだ。

いくら洋平が結衣を持ち上げようが所詮惚気に過ぎないし、そもそも彼以外は誰も彼女に興味がないことだろう。


端的に説明するなら美人よりは可愛い、ざっくり言うと全体的におっとりした印象を持つ。

なんだろう、ト音記号、いやハ長調って感じの子。王道で捻りがゼロの直球な……


一方、服コの女子はハイセンス、例えるならドッペルドミナント。

逆にうちの彼女は身近なセンス。だからだろうか、好きな子が隣に居ると洋平は落ち着く。

昨日着ていた細いストライプのシャツワンピースも爽やかで、凄く似合っていて――

ファッションが変わるだけでドキドキしてしまう。

別に野蛮な思考ではなく、単純に新しい可愛さを披露されるとときめいてしまう。


  俺が彼氏でいいのかな

大変可愛いので、自分なんかで満足なのかと不安になる。

なぜ数ある男の中から自分に惚れてくれたのだろうか。

――彼女に好かれていることは伝わるが、好かれるポイントが分からない。

ああ、なんて青春臭い悩みなのだろうか。

きっと残業に明け暮れる大人たちからすれば、微笑ましいことこの上ない心配事のはずだ。