『そんなに“結衣ちゃん”可愛いの?』

良平を抱っこしてこちらを見据えるアラフォー男性。

さすが“女子高のマドンナ”を落としただけある――歳を重ねても色気がある人。

特別若作りにと着飾っていないが、正統派で清潔な男性といった印象が誠実さを漂わせ、

どうして自分は母親似なのかと洋平が凹む瞬間だったりする。

彼のようなダンディー(死語なのだろうか)とは違い、童顔のせいでラブリーな大人になるであろう未来。

結衣は歳を重ねてもずっとずっと可愛らしそうだ。


「父さん、わざと会話を広げんなって……、りょう!」

『すっごいかわいーよ、白くて髪長くてー目が可愛くてー……白くて細くて白く――『うらやましいなーお父さんも結衣ちゃんに会いたい』


「もー、なんなんだよ、やめて下さい。公開処刑かよ? 何これ明るい家族?」


三流感たっぷりな会話のやりとり、――洋平は現状を否定しながらも、本心は幸せなのかもしれない。

押すな押すなよ心理、言うな言うなよ前フリ精神。
好きな子のことはイジられたいから、愛しの子のことはオイシイから。


くったりとしたソファーへと移り、父親が母親によく似た弟を抱きしめた。
そして傍に駆け寄る兄。

……教科書のように充実した家庭だと誇りに思うも、照れ臭いので音にはしないでおく。

なぜなら洋平は国民の手本と呼ばれるような息子になる勇気も器量もない為。

けれども、こういう雰囲気は好きだし、いつまでも大切にしたいと願う。