皆から好意的にからかわれることは素直に楽しくて、
まるでにらの束を包丁でざっくり切った瞬間くらい心地良い余韻に浸れる。
洋平は兄の彼女を独占した弟並に優越感に浸りご機嫌だった。
けれど――……
『コンコン! 何、彼女のお迎え?』
『また遊ぼうや、たまには奢って』
ありがちな前説を披露しながら、歩み寄って来た二人の男子生徒は、
一年の時に、たまに遊んだり勉強道具の貸し借りをした仲だ。
二年になり離れたのであまり会わなくなった彼らは、普通科の中で比較的“やんちゃ”なツートップである。
……。
友人らが次に何を言うのか見当は付くし、恐らく的中している。
テストの選択問題は外れる癖に、こういう時に限り洋平は当たるのだ。
だから……額に汗が垂れたのは、何も暑いからではない。実に嫌な一滴。
『な、田上ってどーよ』
『一回結衣さん譲って』
――ほら、ぴったし。大正解。
優勝商品はきっと嫌悪感。
……、んー
不快感に包まれた洋平は、「ん。あはは、あれだな、会うなり下品だな、ははは」と、軽く笑った。
……結局これ。
男が集まればこの手の話題、カノジョ持ちになると当然あれこれ語りを要求される。
あいにくお利口な彼氏を継続中の為、洋平は何も期待に応えられないけれど。
もし、何かあっても雅以外に言うつもりはない。
なぜなら、ぺらぺら披露すれば、すぐに噂となり、
それが良い話(……年齢制限な表現なんて言えないけれど。)だとしても、
間接的に彼女にも恥をかかせて傷付けることになるかもしれないし、
他の男にそんな特別な話をわざわざ披露したくないからだ。
好きな女のことは独り占めしたいじゃないか。絶対に嫌だ。自分だけで楽しみたいじゃないか。
――なんて、洋平と結衣に何もないから何も心配ないのだけれど。



