門限9時の領収書

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太陽VS風、余裕で太陽の勝利。
高温の塊を風が冷ますことなく、地上で踏ん反り返る熱。

体の内側から水分を奪われるような暑さに怠さを覚える日が続く。


夏休みになれば、いっぱい結衣と過ごす時間が増えるから今から楽しみな洋平だ。


《長引くかも。待っててネッ》

若干イラっとするわざとらしい語尾がネタだと分かり、つい口元が緩むが、

携帯電話を見てにやける男の図は不気味だろうから意識して唇を張り、

《待ちます、アミンさま》と、返事をした。

洋平と結衣のメールは、二人にしか分からないツボがあるから尊いだけで、

他人からすれば不可解以外の何でもないのだろう。


今日は付き合って何回目かの放課後デートなんだとか。

(彼は数えているが、少々不気味なので正式な数は控えさせていただく)


 ……あーぁ

二年になると彼女の棟と離れたので、なかなか遭遇しなくなってしまった。

そう考えれば去年の隣の教室というポジションはひどくおいしかったのだと思う。

だって、トイレに行ったり購買に向かったり、何かしら廊下を歩けば立ち話ができたし、顔を見られたし。


(ちなみにA・B組は進学コースで第一校舎、CからE組が普通コース、F組が服飾コースで結衣はC組だ)

体育も合同でなくなったので、洋平的には凄くつまらない教室配置だ。

……もしも一緒に授業をするなら、張り切って良いところを見せるのに。


ああ、女中心の生活だなんて恥ずかしいから――彼はいつだってポーカーフェイスを崩さない。

とはいえ、好きな子を思うと気味が悪いくらいダラダラ蕩けた顔面なのだけれど。