門限9時の領収書


本当におかしい。
もし結衣に以前付き合っていた男が居たとして、

洋平が二番目の彼氏だとして、

そうしたら、こんなことにはなっていないのだろうか。


いいや、もし彼女に平均的な経験があったとしても、

二人にとってはファーストキスに変わりないから、こんな風に悩んでいるのだろう。


 なんでこんな好きなんだろ

  ……謎

好きになった瞬間は、今だに洋平もよく分からない。


まさか結衣と自分が付き合うなんて思ってもみなかった。

名前も知らないどころか接点すらなかったのだから。


あの頃の結衣の印象を聞かれたら、単純にE組の可愛い子と答えるだろう。

そう、洋平の彼女は割と目立つタイプだ。容姿、が。


 ……。

  …………。


白状しよう。
少し嘘をついてしまった。

高校生の男子ばかりが集まると、凄く低レベルに女子ランキングを不定期に開催させる。

例えばスタイルが良い奴とか、性格悪そうな奴とか、根拠なく勝手に順位付けをするのだ。

とっても中身がからっぽな者たちによる有意義な暇つぶしなんだとか。


高校に入学して間もなく、集合写真が廊下に張り出された時にも、当然可愛い子探しをしていて――

知らない中学、初めて見る顔、色んな子を見て目眩く新生活に夢を馳せた。


その時、“可愛い子”カテゴリーに、後の彼女となるべき女子生徒は、

学年の中で“彼女にしたい子ランキング”堂々四位に入っていた。


  ……。

決してエコ贔屓満載なオレのオンナ自慢でもなく、夢見がちな彼の妄想でもなく、

確かに結衣は選ばれていたんだとか。