自転車を押して歩く雅の隣には洋平、二つの影はなんだか恋人のようではないか。

なぜ宵闇は人を素直にさせるのか――


「可愛いからさ。見てるだけで俺なかなか幸せなんだよ、ギャグに」

これは本心。


けれども彼だって年頃の男。

可愛い彼女ををそれは当たり前に色々と思う訳で、根っから紳士な訳ではない。

矛盾だらけの人間。信念なんかなくて軸は揺らぐばかりだ。


やっぱりこの前のお化け屋敷で手くらい繋ぎたかった。
一昨日の家デートも手くらい触りたかった。


手“くらい”で、“たかが”手。


簡単なことが大事で難しい。
つじつまが合わないのは、恐らくまだ大人ではないから……



――これは、本当に本音。


「でもさー市井さん。正直やっぱさ? 分かるだろ、今どんななのかなーとか。はは、きしょいな俺」

『あはは、なかなか気持ち悪いって、訴えられるから、はは』

酔っ払いが絡むように、洋平は地面に座って雅の足を抱きしめた。

ずっとずっと悩んでいる、無意味なことを。

しょうがないじゃないか、高校生。半人前なのだから。


どうか洋平に嫌悪せず、『青臭いなー』と軽く笑い、彼を応援する気持ちで何卒よろしく願いたい。


「だってさー好きなんだよ、なんか……なんかすっごい好きなんだ。あはは。

こんな好きとか本人に言ったことないよ俺。恥ずかしいじゃん、照れるから言えない洋平クンな訳よ」

笑いながら本心をさらさらと暗闇に吐き出した。

今更取り繕うつもりはないし、こちらを見透かす雅になら隠す必要もない。


格好悪いところを見せることができて、ようやく思春期らしい友情が成立するはずだ。

痛いところを時々さらけ出せる感じ。