やっと恋愛モノらしく、十六歳少年による可愛らしい感覚が全面に押し出されてきたようだ。
そう、キスより何より、洋平は単純に結衣が好きなだけ。
愛してやまない大切な存在を大事にしたいだけ。
……恋人。
親友だからかサービス精神旺盛なのかは知らないが、
雅は洋平が一番望んでいた歌を奏でた。
『彼氏……、今の洋平の感じが普通に田上さん楽しそうだよ? 全然、はは』
左の胸の奥底から広がる華やかな快感に包まれた。
今のままの自分が作る“友達なノリ”こそ、彼女にとっても最適なもてなしじゃないかと。
悪く言えば幼稚と呼ぶけれどと悪戯に追加させていたが、
雅は彼氏の変な愛し方を肯定してくれた。
ここ一ヶ月、もやもやとしていた気持ちが綺麗さっぱり洗われたような気がした。
洋平は自分の中で自分という人間の性格を整理できたみたいだ。
……。
本当は不安だった。
現在の関係に満足している自分は、周りに比べてオカシイのではないかと。
聞きたかった言葉を紡ぐ唇、男相手に可愛いなんて思ってしまうではないか。
人には人の進展があるんだと言われて嬉しかったし、
彼女の場合、(鈍い訳ではないが)極端にペースが遅いのだろうから、
そこを汲み取れる彼氏の洋平を立派ではないかと支援されていて、ほっとした。
『田上さんって笑いたいんじゃん?』
「そう! なんか向こう悪ガキみたいで……ウフフとか関係なく。腹抱えて笑う感じ、分かる? 爆笑……なんか。自然体」
女オンナするより、いかに彼氏を笑わせようかと――はしゃぐ結衣が好き。
いかにセンスのよいツッコミをできるかが快感で、自分とものさしが似ている結衣が好き。
そんな丁寧な恋心を忘れて血迷って、そうなりたい訳ではない。
……楽しいのは洋平の方。
そう、今の感じが幸せなのは洋平の方なのだから――……
雅の目、彼を前に嘘は通用しないから、この際正直に言おう。
白状するなら……



