そして、その清潔感溢れる幼さには、夜の要素は関係ない。

人として惚れまくっている結果なのだろう。


全く不可解な話。
一年前の自分は結衣の存在すら知らないのに、

これから一年後の自分は 、ますます彼女なしでは生きていけなくなる不思議。


頭の中にはいつだって当たり前に髪の長い子が居る――……ああ、なんてメルヘン思考なのだろうか。

髪を切ったならどうなるなどと、どうか見損なわないで――これから一方的に語る洋平の考え方は、

きっと高校生を卒業した頃には素敵になるはずなのだから。


スニーカーの裏でしっかりと地面を踏む。

一歩一歩、ゆっくりでもいいから確実に進んでいきたい。


耳を引っ張り、洋平は言葉を零した。


「しなくても全然楽しい、毎日。普通に。」


恋をした自分は、なんだか良い意味で平和ボケしたのだと思う。

幼稚になれることが幸せで堪らない。


しかし、男子高生となれば引かれるだろう。

付き合っておきながらキスどころか手さえ握らないで満足している自分は皆と違うのだから。



夜闇を打ち消すように車のライトやお店の外灯、民家の明かりが辺りを照らす。

太陽が消えると風が柔らかくなるのは何故。

汗をかいて疲れた体を優しく解してくれているのだろうか。


目の前に居る人、黒い髪が似合う人。

彼を前にすると、きちんと恋愛をしなくてはならないような気がする。

“正解”しか許されないような気がする。


  ……。

嘘をつくことに慣れた自分だから、雅に打ち明けたことを少しだけ洋平は後悔した。