「ほんと今のまんまな関係で一年経っても全然アリで……チューとか、別に。まだいい。分かるだろ?

話すだけで本当楽しい、隣で。ぺちゃくちゃTVの話してたら楽しいし、笑えるし」


そうなのだ。
実際、今の距離感が楽しくてしょうがない。

隣に好きな人が居て、自分が話せば笑ってくれて、たまにふざけて好きだと言っては大袈裟に笑う。

幸せ、慶福、万福、多幸、幸福。どれでもいい。


白い色は潔白しか許さないから、少し後ろめたさを感じるけれど、

今世界を包み込む夜の色は、逆に素直になれるような気がして、心を曝す勇気が出る気がした。


洋平は結衣が好き。

例えば、わざと二人で子供ばかりの公園で鬼ごっこをしたり、

ご飯屋さんのテーブルにあるアンケート用紙の裏に、国民的キャラクターの落書きをしたり、

TVを見ながら長電話をしたり、たまに授業中メールをしたり、

そんな馬鹿みたいな感じが凄く特別で愛おしい。


免許をとって海辺、夜空を眺めてドライブだってしたいけれど、

自転車で二人乗りをして猛ダッシュしたり商店街はきちんと押したり、夕暮れに染まる方が楽しい。


背伸びをして大人らしく洒落たバーに連れていきたいけれど、

地元雑誌片手にオープンしたばかりのカフェ巡りをする方が面白い。


ダーツをしたりクラブに行ったり夜遊びは魅惑的だけれど、

昼間に普段は通りすぎるだけの河原でわざと石投げをしたり、犬のフンを数える方が笑える。


わざとらしくも幼い遊びが盛り上がるから、もっともっと好きになる。

そこには幸せしかないと、目が覚めても言える洋平だ。


今、結衣と二人で行っているさほどお金がかからないデートは、

学生という肩書をなくした大人たちが渇望する溌剌とした恋愛の象徴。

放課後缶ジュース片手にひたすら太陽の下、お喋りができる尊さ。

それは高校生の今しか味わえない一時であり、大切な恋愛の仕方。


大人になると出来なくなる――大人たちが羨む若さに溢れた貴重な時代。


ちなみに若さとは年齢を言うのではなく、ハートのこと。すなわち甘酸っぱい恋心のこと。

失いつつある無邪気さを武器に馬鹿になれる戦闘着が制服の頃の必殺技。