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脱脂綿を裂いたような雲が浮いている空は穏やかで、

その癖 暑さを増長させるギラついた太陽の破壊力は半端ない。

教室が鍋で生徒がブロッコリーなら汗が塩となり、とっくに綺麗な緑色に茹で上がっているだろう。

――なんてのは嘘。

マドカ高校は冷暖房完備なので、逆に涼しく(むしろ寒いくらい)非常に快適である。


 、ボーリング

  楽しかったな……

  最高四十八点か


スコア表、紙切れさえも記念になる。

好きな人と過ごせば、毎日毎日思い出が増えるので困ってしまう――のは、嬉しい悩み。


本当は洋平の性格上 家まできちんと彼女を送りたいが、

過保護に接して結衣に気持ち悪いと引かれたくないので、

お見送りは“駅まで”と一人で決めている。

(けれど心配なので防犯ブザーは初デートの時に、『ナイトを雇わないと』と滑り倒した駄洒落を交えて買わせた。

プレゼントにしたら引かれそうだから、あえて“本人の意志”で購入させた次第である。

このエピソードにキュンとなる女性は、なかなか男を見る目があるはずだ)


 かわいーな……

プリクラは携帯電話に画像で転送できるらしく、そのまま二人を待受画面にしたいのだが、

不意に友人に見付かった際、大変恥ずかしいし、クラスメートの反応が怖いので抵抗がある為、

単にデータフォルダに保存しているだけだ。

お陰でメモリの空き容量がなくなり、SDカード的な小さいチップを使用することを余儀なくされた。

恋人ができる前は記録にこだわらなかったが、

なんだか赤ちゃんが生まれたばかりのパパのように記憶することが生き甲斐になりつつある。