真っ直ぐに信頼しきった結衣の瞳に咎められている気がして、

洋平は逃げるようにして卒業アルバムを取り出す為に、クローゼットへと向かった。


  ……。

満面の笑みが憎たらしいなんてチラリと不満に思ったものの、

彼氏である以上 むやみに突っ走れない。

そこを暴走すれば彼女は戸惑うだろうし、自分に幻滅するだろうし、最悪嫌いになるだろう。


それに、好きとは違う要素を八割含んで結衣に安い愛を押し売りしたなら、

自分が考える理想の恋愛物語とは幸せが違うから嫌だ。


だって、今抱いたなら恋心の正当性がハテナになってしまうではないか。

本当に好きだから?
本当はしたいから?
本人は前者だとしても、皆からは後者だと思われてしまうことを知ってしまっている。

どんなに真剣でも、しっかり二人が幸せでないと、『やりたいだけじゃん』と呆れられるし、

まだ早いと、大人たちに嫌悪される意味を考えることに意味があるのだと洋平は思う。

ちゃんとゆっくり考えることが今の中で最大限の愛なのだと信じたい。



好かれているからこそ、期待に応えたい。好かれる彼氏でありたい。

――けれど矛盾してしまい、洋平は自分の感性が堪らなく切なくなる時がある。

理性なんか欲しくないのに、こんな性格をしているのは何故。

長男だからと都合よく信憑性が謎な家族構成論にのっとり、納得できたらいくらかマシなのに。


思い出の分か重たい卒業アルバムを机の上に広げた。

等間隔でちりばめられた顔写真。

たった一年前にも関わらず幼いと感じる程に時が経ったのだろう。


そう、中学を卒業してから高校生になった時間の中で――彼女と出会ったのだ。

素敵な詩集を自費出版できるくらいに愛しい言葉しか浮かばない。


「なんか子供」

中学の頃はアシメ髪で毛先を立たせるのが流行っていたので、

個性のかけらもない洋平は王道のヘアスタイルだ。(十分に今も個性はないのだけれど)


「うわ、若、えー違うーなんか……あ、眉?、細い」

約一年前の笑顔の自分は、確かに眉が必要以上に薄い。

それがまた教室で流行っていたからで、オシャレとは最先端なものに目がないことだと思っていた頃の可愛い話。