Reality~切ない恋の唄~

結局、一度もカメラを見ることはできなかった。



もうボロボロだ…。

緊張し過ぎて、
どんなふうに歌ったか全然覚えてない。



早く逃げ出したくてドアに手をかけた時、審査員が口を開いた。

「高橋、歌習ってるの?」

「習ってないです。」

透明に近いくらい薄茶色のサングラス。

視線は感じるのに、
グラスが光を反射して表情が読み取れない。



その視線が私のつま先から頭のてっぺんまで、上下に動いた気がした。

「高橋って、東京の子じゃないよね…?」

「はい…?」

その質問の意味って…?