表の看板には『魔界案内所』と書かれている。

「ここで聞けばいいのか」

ノックをした後に俺は扉を開く。

部屋は雑居ビルのオフィスくらいはあるだろうか。

右手にはベッド、左手には木の机、その傍には桶に入った水がある。

椅子に座った女がいる。

どうやら魔界の住人のようだ。

耳にはヒレがついており、目は青一色で白目はない。

肌の色は青色に近く、髪も青で背中まではあるだろう。

魚と人間のキメラといってもいい。

「お客さん?」

外で出会った魔族とは違い、落ち着きはある。

「そうだ」

「こんなところを人間が歩くなんて、無謀にもほどがあるわ」

「テメエの忠告なんて聞くつもりはねえ」

「あら、じゃあ、ここに何しにきたのかしら?」

「情報を貰いにきただけだ」

魔界といっても、場所によってはレベルが足りなさ過ぎると即死する可能性がある。

剣術をもっていたとしても俺は無敵ではない。

「失礼なお人だこと」

呆れた顔になりながら、ため息をついた。

「情報を渡すのか渡さないのか、どっちだ?」

剣をチラつかせる。

「しょうがないわね。お金はあるの?」

おびえている様子はないが、客という事で仕事をするようだ。

「ただじゃないのか」

金に執着する部分などは人間と変わりはない。

「こっちだって慈善事業じゃないの」

「いくらだ?」

「そうね。魔界の住人じゃないからなあ。これくらいかな」

払えなくはない金額を提示してくる。