「じゃあ、ご飯作って待っておくね」

「ああ、そうしろ」

ネロとは一年にもなる生活をしている。

魔族といっても、体の作りは人間とあまり変わりない。

あまりに人間からかけ離れてる者もいるが、論外だ。

ネロは人間に近かったからこそ、交わる事も出来たのだがな。

男女が一年も同じ屋根の下にいるのなら、行為が起きてもおかしくは無い。

だが、付き合っているかどうかといえば、不明瞭な部分がある。

不明瞭であるほうが、気軽で楽だ。

「ねえ、虎、何も言わずに消えるなんて、やだよ」

「どうだかな」

「ずっと一緒じゃなくてもいい。それは私だって分かってる。でも、何も言わずにいなくなるのは、やだ」

「それくらいは、覚えといてやるさ」

「うん、じゃあ、行ってらっしゃい」

俺は木造住宅から外へと出る。

家の周囲には畑や木々があり、野菜や果物がなっている。

どうやら、人間界で農業に興味を持ったらしい。

魔界では農業は出来るほど土の質は良くない。

やる事のない俺は、時々ネロの手伝いをしている。

ネロは農業を楽しんでいるようだ。

俺の邪魔さえしなければ、とやかく言うつもりもない。

「どこに行くか」

腰に一太刀を携えながら、今日の予定を考える。

剣はネロから譲り受けた物だ。

どうやら、ネロの家にあったものを勝手に持ってきたものらしい。

ネロ曰く、魔剣らしい。

使えるのなら使う。

そして、俺の手に馴染む。