「・・・田端さん。 これ」



春海がついに話し掛けてきた。



正義は「ん?」と少し身体を春海の方に寄せたが、目はパソコンを見たまま。



(しらじらしい)



と美紀子は思った。



「大仏まんじゅうです」


「あ、そうなの~」



無表情の(威厳を持とうと思った)正義だったが、頭と心はハッピーでいっぱい。



「いいね~、旅行なんて何年もいってないよ~」


「そうですか」



美紀子(いくひとがいないだけだろ)



「あ、ジジィなのがバレバレ?」



美紀子(じゃあ、同い年の私もババァってことぉ!? しかもバレバレもなにも年齢知ってるジャン)



それはさて置き、正義はまんじゅうをスグにデスクの上に置いて仕事を始めた。



だけど後悔でいっぱいだ。



(なんで“ありがとう”っていわなかったんだろ・・・)