その日、ずっと正義は今までのことを思い出していた。


小さな頃は人見知りの虐められッ子。 大人になっても冴えない男で、彼女がほしくて頑張ってみるものの、振られっぱなし。



「いったい俺のなにが悪いんだ?」


と心の中で、世の中の人に問う。



「・・・」



正義は自分の名刺に携帯番号とアドレスを書いた。 よく考えたら、未だにさえの携帯番号を知らない。 2人っきりのときに、この名刺を彼女に渡そう。



そしてその日の帰り、タイムカードをきる場所で運命的にもさえと一緒になった。(本当は見計らってついてきただけ)



「はい」


さえの背後から、にやにや笑顔で名刺を差し出した正義。



「? これは?」


「いやぁ~。 春海ちゃんに携帯番号教えたのに、さえちゃんには教えてなかったから~」


「あ~・・・、はい」



とりあえず名刺を受け取ったさえ。



「じゃあ、私の番号は送りますね」



それだけ言うと、さえはお辞儀をして去っていった。



(やった! 番号交換!)


正義は廊下で1人、にやにや笑っていた。