「あれは・・・
俺が好きだって言ったら、
佐久本、急に泣き出してさ。

それがあんまり儚いっていうの?

か弱いっていうの?

そんな風にみえて・・・

無性に抱きしめたくなって、
そうしたんだ。

俺が抱きしめても、
佐久本が抵抗しなかったから、
てっきり俺のこと
佐久本も好きなんだって思った。」

祥平は、伏し目がちに
ぽつりぽつりとさっきの様子を話しだした。

「俺にも・・・そう見えたけど?」

俺がそう言うと、
一平もうなずいた。

「だろ?
誰だってそう思うよな。

でも違ったんだ。

・・・・・・・泣いた後、
佐久本は、
はっきり・・・・・

俺の想いには、
応えられないって言ったんだ。

そして、
部室から飛び出していった。

今思えば、
あん時の佐久本の涙は、
なんだったんだろう?」