アパートに着くなり、靴も脱がずに玄関でカズ君に抱き締められる。 「カズ君…?」 私を抱くその腕は、気のせいだろうか。…震えている。 「…………。あの、…さっきの人って誰ですか?」 それでも声はピンと張ってる。 それはときたま見せる、カズ君の男の一面。 「誰だと思った?」 あえて試した。 ううん。ちょっと意地悪しちゃおって感じ。 あの人はもう過去の人。