「そう、未葵だよ。
蒼太に聞いたことあった?」
秋山先輩は少し驚いたように言った。
私はううん、と首を横に振る。
「前に寝言で言ってたの。
それを勝手に聞いただけ。」
そう言うとふぅん、と一応納得したように呟いた。
そこで気付いた。
「あ…」
秋山先輩は、徐々に足が見えなくなってきていた。
私の声に下を見た秋山先輩は、少し顔を歪めて、
「早いな…」
と呟いた。
もしかして、秋山先輩は………。
「また、私の前から消えるの?
…嫌だよ、そんなの…。」
渇いていたはずの涙がまた目に溜り始める。
行かないで。
子どもみたいに、でも何処かで叶わない願いとして、思っている。
行かないで。
行かないで。
初恋の人。
「……泣くなよ、嶋津。」
ポンと優しく肩を叩かれた気がする。
「お前はな、生意気で、偉そうで、後輩としては最悪だけどな…。
俺にとっては、可愛い、大好きな女なんだよ。
だから、泣くなよ。」
秋山先輩は、飛び切りの笑顔を見せた。
その顔は、段々と薄らいで……。
見えなくなった。



