……おぎゃぁぁぁぁ! その時。 目の前の扉の中から元気な産声が聞こえ、しばらくして扉が開いた。 出て来た看護師が、どうぞ、と文弥を呼ぶ。 「元気な男の子ですよ」 文弥は、椅子から立ち上がった。 分娩室に入ると、ベッドの上に汗だくになって横たわっている絢音が、微かな笑みを浮かべた。 その腕には、生まれたばかりの小さな命が抱かれている。 文弥は微笑んで、絢音と赤ん坊のもとに駆け寄った。