「ちょっと、やってみたかっただけ。感動した?」

「ちょっとだけね」

そう言う天野をもう一度抱きしめ、天野がきゃーやめてーと騒いでる間に、列車は到着した。

真っ白なドアが、悠里の前で静かに開く。

悠里は今度こそ天野を解放し、列車に乗り込んだ。

もう一度振り向いた悠里に、天野は笑いかける。


「たとえ死んでも、悠里くんが過ごした日々は消えない。確かに君はこの世で生きていた。それはずっと、皆の心に残り続ける。……ずっと」

天野は胸に手を当てた。

「悠里くんの軌跡は、ここで輝いてる」

悠里は笑って頷いた。