「円香…アイツもう行ったよ」
オレの声を合図に、ようやく円香が顔を上げた。
だけど、やっぱりまだ瞳が潤んでいる。
そのせいで、綺麗に施されていた化粧も滲んでしまっていた。
こういう時…
どうすればいいんだろう?
そんな疑問を浮かべた所で、答えはもう決まっていた。
だってオレ、単純だから…
1つしか思いつかないんだ。
「円香…」
涼しい5月の風が吹く中で、オレは目の前にいる愛しい彼女の名前を呼ぶ。
そして、その額に…
そっと…キスをした。
「え…?」
驚いた円香がオレをじっと見つめる。
崩れた化粧に、真ん丸の瞳。
だけど、どんな円香だって構わない。
「これからは…オレがちゃんと守るから」
そう言って、目尻に残る涙を拭った後…
「…んっ」
円香の口から…
甘い声が漏れた。
足元には…
重なりあう2つの影が…
はっきりと映っていた。

