「…もう大丈夫だから」
あたしを抱き締めながら、優しく言う神崎君。
息が上がっているのを見ると、ここまで急いで来てくれたことが分かる。
試合でずっと走り続けて疲れてるはずなのに…それを全く感じさせない。
ようやく訪れた安心感に、あたしの目にはいつの間にか涙が浮かんでいた。
頭を撫でてくれる神崎君の大きな手…
ユニフォーム越しに聞こえてくる心臓の音…
そして――…
「落ち着いた?」
そう尋ねる、柔らかな笑顔…。
何もかもが、あたしを楽にしてくれる。
いつもは手を繋ぐだけでも、ドキドキするはずなのに…
今日はすごく心地いい。
「チッなんだよ。男持ちかよ」
背後から、起き上がった男の舌打ちが聞こえ、
そのままヨロヨロと立ち去る気配がする。
「てめぇ…ふざけんなよっ!」
神崎君は、慌てて男を追おうとした。
でも――…
「行かないで!」
あたしは咄嗟にそれを止めた。
神崎君と…
離れなくなかったんだ…。

