「嘘〜…」
あたしは、客席の後方で手鏡を見て固まっていた。
だって、そこに映っていたあたしには、
色気の欠片もない。
髪の毛はボサボサ。
メイクもガタガタ。
今更ながら、計画を忘れ、興奮していたことに後悔の嵐だった。
「トイレに行って直してこなきゃ」
そう思い、早速少し離れた場所にあるWCと書かれた建物へと向かった。
でも、これが間違っていたんだ。
不器用なあたしなりに一通りメイクも髪型も直し、
これからの計画が上手くいった時のことを妄想しながら出てきた時…
「君、可愛いねぇ…」
そう言いながら、あたしの前に突然現れた人物…。
帽子にサングラスにマスク。
表情は見えないけど、怪しい笑顔を浮かべているのが分かる。
ジリッジリッ…
一歩ずつ近づいてくるソイツに、一歩ずつ下がるあたし。
あたしの背中がトイレの建物のせいで逃げ場を失った時…
ピッピッピーッ!!
試合終了の合図が、遠くから聞こえていた。

