「じゃ、行こっか。
掃除始まるみたいだし(笑)」
「う…ん」
一時、誰もいなかった場内では、今は数人のスタッフがゴミ集めをしている。
だから、さすがにもう出なければいけない。
それは分かるんだけど…。
神崎君…
あたしの言葉、完全にスルーしてない?
何でもいいから…
お願いして欲しかったんだけどなぁ…。
そんなあたしの想いは神崎君には伝わらないようで、
神崎君はどんどん先へと進んで行く。
映画館を出て、元来た道を戻っていく。
周りには、仲良さそうに腕を組むカップルが数組。
映画の感想を言い合ったりして、とても楽しそうだった。
でも、あたしたちには会話がない。
ついさっきまで、大笑いしていた神崎君も、
何故か黙り込んでしまっている。
今は…手さえもつないでいない。
神崎君…
どうして―――…?
その時、初めて思った。
もっと、
神崎君に触れていたいって。
だから、あたしは、神崎君の背中目掛けて、
思いっきり飛び付いた。
「神崎君っ!!」
ガシッ!!
ん?ガシッ……??

