神崎君が差し出した手に、自分の手を重ね、
ゆっくりと立ち上がる。
誰ひとりいなくなった場内に、2人の息遣いだけが聞こえていた。
「ねぇ、神崎君。
あたし今日、色々やらかしちゃったから、
お詫びに神崎君のお願い、何でも聞くよ!」
――怒らないし、嫌わない。
そう言われたけど、
やっぱり一回は、まともな自分を見せたかった。
今日はずっと頼ってばかりだったから、
少しくらい、逆になったっていいでしょ?
「何かない?」
そう尋ねるあたしを前に、神崎君は何かを考えているようだった。
そして、数秒後。
「あー。
少しだけいい?」
「もちろん!」
神崎君の役に立てると思うと、とても幸せな気分になる。
「じゃあ…」
「うん?」
首を傾げたあたしの頬に、
神崎君の温かい手が、そっと触れる。
持っていた荷物が、ドサッと音を立てて、
落ちた。

