驚き過ぎて、何も考えられないあたしを、神崎君はいきなり連れ出した。


「え…あ!ちょっと!」


「大丈夫。すぐ、済むから」


女のあたしの抵抗が、男の神崎君に敵うはずもなく…。


あっという間にあたしは、誰もいない駅のホームの端っこに連れて来られていた。




「……」


あたしの腕を掴んだまま、何も話そうとしない彼。


「あのー…」


あたしは、手首に付けていた腕時計を見ながら、思い切って話しかけてみた。


「あたし、時間がないんですけど…」


実は、これは嘘。


珍しく早く家を出たおかげで、本当はかなり余裕があった。


だけど、あたしは、一刻も早く、この場を切り抜けたかったんだ。



なぜなら…