「新年度早々、遅刻してきたと思ったら…

そんなことになってたんだ」


「…はい」


思い出すだけでも、茹で蛸状態になってしまうあたし。


神崎君の言葉や仕種が、頭の中にまだはっきりと残っている。




――結局、あの後は、照れながらもケータイの番号を交換して、お互いの学校へと向かった。


でも、着いた頃には始業式はとっくに終わってて。


HR中担任が背を向けている間にそぉっと教室に入った。


うちの高校は、3年間クラス替えがないから、それほど気まずくはなかったけど。


まだ信じられない思いがいっぱいで、当然、担任の話は上の空。


いつの間にか終わっていたHRの後で、凪ちゃんが話し掛けて来たというわけだ。



「…でも、まさか円香の初彼氏が神崎君だなんて…。

あたしも今度駅でコケてみようかな…」



「何言ってるの、凪ちゃん!?

凪ちゃんにはちゃんと彼氏がいるでしょ」



「えへ♪」



…えへ♪って…


そんな能天気な…。