神崎君はケータイの画面を見ると「ごめん、ちょっと待ってて」と言ってその場を離れた。
心なしか少し焦っているように感じたのはきっと見てしまったからだろう。
神崎君がポケットからケータイを取り出した時に一瞬だけ見えたディスプレイの文字。
『着信 小春ちゃん』
本当に一瞬だったのに、
はっきり見えてしまった。
――両目1.5。
この時ほど、自分の視力の良さをイヤだと思ったことはない……。
あたしは、少し離れた場所で、ケータイ片手に楽しそうに話す神崎君に目を向ける。
電話の向こうの『小春ちゃん』に向けられたその笑顔。
胸が……痛い。
ねぇ、神崎君?
おととい一緒に歩いていた女の人は……
『小春ちゃん』なの――……?
ぐるぐると回る思考の中で、あたしは昨日の出来事を思い出していた。

