ジリジリと焼けるような
日差しを放つ青空、
浜辺に広がる砂の熱さや
突き飛ばされたときの浮遊感、
溺れている場面では本当に、
呼吸が止まっているのかもしれない。

時間では解決できなかった夢の感覚は、
十年も前に見たあの夢の感覚から、
何も変わってはいなかった。

それなのに、
ぼくはしっかりと中学生になっていたし、
ぼくたちを襲った連中の顔も、
ぼくが知っている連中の顔に変わっていた。

お姉さんは相変わらず
若くて綺麗な姿をしていたけれど、
だからこそ、
下手に成長した男の感性が、
夢をより残酷なものへと
変えてしまっていた。

連中に襲われながら、
お姉さんはぼくを
ジッと見つめていた。

でも、それが
どんな表情だったのか、
もう思い出すことはできなかった。

助けを求めていたのか。

逃げなさいと
呼び掛けてくれていたのか。

あるいは、
何もできずに
立ちすくんでいたぼくに、
軽蔑の眼差しを向けていたのかもしれない。

いっそのこと、
何か汚いものでも見るような目で
見てくれていたのなら、
どれだけ気が楽だったことだろう。

お姉さんの顔が
自分の記憶から
消えかけていることが恐かった。

水中に沈められたことよりも、
お姉さんが襲われたことよりも、
ぼくにはお姉さんを
忘れ去ってしまうことが、
何よりも一番恐ろしかった。

優しかったお姉さん、
どうして死んでしまったのだろう。

幽霊でも良いから、
もう一度だけでも
お姉さんに会いたかった。

見つからない顔を
探せば探すほどに、
今まであんなにも
こらえてきた涙が溢れだしてきた。