その日、
委員長はお昼頃には帰ってしまったけれど、
僕にとってはここ数年でも特別な日になった。

かつて
体験したことのない感情に触れて、
何かが変わる気がする。
何かを、変えられる気がする。

「さっきの可愛い子、彼女?」

看護師が
何かを期待するように訊いてきた。

「ただの・・・・・・クラスメイト」

ぼくは小さく首を振って応えた。

そう、ただのクラスメイト。
それでも、ぼくにとっては
もう特別な人になっていた。

「そうなんだ~。そうそう、
さっき先生が言ってたんだけど、
あと一週間くらいで
退院できるみたいよ」

あと一週間、文化祭には間に合いそうだ。
ぼくは委員長から貰ったチケットを、
荷物の一番奥にそっとしまった。