「さっき、仕事終わって帰ってきたらね……

ルナが…

ルナがね……」


俺の胸が一瞬ドキンと大きな音を立てた


「最初、眠ってるって思ったの……

でも、全然動かないから、おかしいなって…思ったらね……

ねえ、寝てるみたい、なんだよ

でも……動かないの」





コタツに入って丸まる姿を思い出す

人肌にあたためられたミルクが好きで……

“大好きな人がアタシに名前をつけてくれたんだー”

……ルナ???


寒くて暗い公園で、カラスに狙われて小さくなっているちっこい子猫を抱きしめて家に帰った


気まぐれに俺にすり寄ってくるときは、首に控えめにつけられた小さな鈴がチリンと鳴っていた

……ルナかよ……


社会人になって家を出るときに、母親に「早く結婚相手みつけなさいよ」って悪態をつかれて、近くを歩いていたルナをだきしめて……

“お前は俺が愛した最初で最後の女だよ~”って……言った


俺を見つめる丸い目がかわいくて、かわいくて








泣きっぱなしで話にならない姉貴を、なだめた

自分でもなんと言ってなだめたのかわからないほど、俺も動揺していたけれど……


息を整えた姉貴が電話口で涙声のまま言った


「不思議なんだよ

ルナね、右手にバンドエイド貼り付けてるんだ」


そういって、ちょっとおかしそうに笑うから……

「ああ、割れたガラスでも踏んだんじゃない?」

俺はそう答えて一緒に少し笑った