「き、きれいな声…?!」


驚きのあまり、少し声が裏返った。

歌姫はくす、と口元を緩めた。


「えぇ、貴方、声はとっても綺麗よ?」

声は、という部分が心なしか強調されていた気はしたが、


なんて言ったって、あの歌姫が僕の声を褒めてくれたんだ。

すごく嬉しい。


自然と顔がにやつくのがわかる。

「ねぇ、課題になっている曲、テープとか聴いたことある?」

彼女は、手に持っていたテープを僕に見せながら問い掛けてきた。


「えっと……お手本とかが入ってるやつは、ない、です」

「どうして?聴けばいいのに」


歌姫はきょとんとした表情を浮かべた。

「先生はすごく褒めてくださるけど、私だって何度も手本の歌を聴いて、それの真似をしているの」


「貴方だってそのほうがやりやすいと思うわ」