あたしは振り返らなかった。


たまに溢れそうになる涙をこらえて、廊下を走って、階段をかけ降りた。




今はもう、「咲」。



それしか考えられない。






キャンプファイヤー真っ最中の中庭にたどり着いたけど、人が多くて見つけられない。



早く、会いたい。




「咲ぃぃぃぃぃいいいい!!」


どうしようもなくて叫んだら、



「ゆうぅぅぅううううう!!」


数秒後同じように叫んで、遠くから走ってきた咲。




「どこ行ってたんだよ探したんだ……ぞっ……うわっ!?」



咲が言い終わる前に抱きついた(飛び付いた)。



そのままバランスを崩して転んだ。←



咲に抱きついたまま、あたしは言う。




「好き。たぶん、ずっとず~っと前から、好き」



「……………………ははっ」



え、笑った?



咲はあたしの体を起こし、自分も起きてから、あたしを抱きしめた。



「おせーよ」


あたしの肩に顔をうずめた。


首に感じる吐息がくすぐったい。


でも……そうそう、この匂い。



「ごめんね、待った?」


「すげぇ待ってた」


「いつから?どのくらい?」


「知らねーよずっと前からだよ」



愛しい。その声の感じも、少し熱を帯びた体も、全部。


なんか、意識したら心臓がものすごくドキドキしてきた。もうすぐ破裂するんじゃないだろうか。