―ATSUSHI


今でも夢に見る―…

あの日の悪夢。
野球が全てだった俺が
野球を失った日。


いつも通りに目が覚めたのに
右手の感覚が無くて…
起き上がる事さえ出来なかった。

目を向ければ、
巻かれた包帯に滲む血の跡。
ポタポタと俺に液体を運ぶ点滴。

理解出来なかった―

母さんは泣いてて
父さんは俺と目合わせないし
医者はもう野球出来ねぇって言う。

さっきまであんな最高の勝負を
キリとの勝負をしてたはずなのに…
何言ってんだ?こいつら。

野球は俺の一部なんだよ。
バットもボールも…
骨や肉と同じように。
出来ない訳ねぇだろ。

必死にリハビリした。
どんなに辛い事があっても
決して弱音を吐かなかった。

そうしてやっと退院出来た後


―…俺は絶望した。